研究内容
20年前とは異なり、材料を作って簡易的に評価するのみ、計測するのみ、計算するのみでは、東南アジアの意欲的な数多くの人材に対しての強みになるとは言えない時代になってきています。このような時代背景を考慮して、分業式ではなく、化学・物理・情報を取り入れて先駆けて先端的な研究を行っていく、若手人材の育成を視野に研究活動を行っています。
その材料の中でも分子を用いた研究を中心的に行っています。分子はその形の変化や周囲の環境の変化により驚きの機能(例えば押すと色が変化する、光を当てると動く、ある溶液をかけると動き出す、温度とともに発光色が変化する等)が発現します。このような柔軟且つ多彩な機能は、金属や無機の材料ではなかなか発現しません。分子の骨格はどうするか、またそれをどのような環境で用いるかのバリエーションは無限大なので、各人の感性に基づき研究を行うと、各人の個性が材料の機能につながりやすい分野といえます。
研究室での具体的な研究内容としては着色や発光する分子材料の研究を行っています。どういう論理に基づき、どう分子を設計し、どのように作り、どのような状態で用いると高性能もしくは特異的な着色状態や発光特性が発現するのかを研究し、その高性能もしくは特異的な着色や発光機能を用いるとどのような世の中に貢献できる可能性のある商品ができるのかを考えています。
①発光の遅延の軌跡が残る分子材料
通常:分子は室温で遅延発光を示さない
本系:秒オーダーの長い遅延発光が出る
応用:偽造防止、イメージング
②周囲が明るくなると色が濃くなる材料
通常:吸光度は周囲の明るさに依存しない
本系:吸光度が周囲の明るさと共に向上
応用:スマートwindow
③高性能有機EL材料
通常:ディスプレイ表面の膜より効率半減
本系:上記膜により光が妨げられない
応用:被膜ディスプレイ
④吸収波長よりも短波長に発光する分子
通常:吸収波長より長波長側に発光
本系:吸収波長より短波長側に発光
応用:発光イメージング、人工光合成
(例)
・ブラックライトの照射停止後もしばらく発光する分子材料
・光の強度を増加させると色が濃くなる分子材料
・高性能の有機EL材料
・マルチな発光色を示す分子の構築
(その他、細かいテーマは多彩)
上記4点に関する研究を進めてはいますが、できるだけ自分でやりたいテーマを選択していただけるように他にも多くのテーマを用意するようにしています。
各テーマを選択する中で、下記スキルを習得していきます。
それぞれの研究では以下のような取り組みで研究を行っています。
(Aさんの場合)
既存の概念を用いて計算を利用して分子を設計し、分子を作り、目標とする性能を目指す
(Bさんの場合)
実験の中で生じた不思議な現象(新しい研究シーズ)のコアとなる部分を各種計測に明確にし、その本質を計算も用いて検証し、次の分子設計を提案して、次の新材料の合成につなげていく。
(Cさんの場合)
既存の概念を用いて新しい機能材料を構築して、応用先を提案するデモンストレーションを行う。
上記を行うためには、化学的な実験スキルだけではなく、式や物理的な洞察力、情報や計算を行うための学習が必要になります。それゆえ、研究室では選択していただいたテーマに対して、下記4つの武器を学習しながら、自分で必要なものを判断してさまざまな研究サイクルを構築して研究を進めていってもらっています。